第3回院生ゼミ

2023.04.26 第3回院生ゼミ

本日は,第3回院生ゼミが行われました。同期のストマスで一緒に学びたいという意欲の高い学生が3名加わり,今まで行うことのできなかった議論や疑問やそれぞれの考えを伝え合うといった学び合いができました。

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【学習目標に関して】

三井先生から,インストラクショナルデザイン(以下,ID)についてのお話をいただき,学習目標を設定する際の留意点に関してご指導をいただきました。

IDとは,教育活動の効果・効率・魅力を高めるための手法を集大成したモデルや研究分野,またはそれらを応用して学習支援環境を実現するプロセスのことです(鈴木 2005)。認知心理学,社会心理学,教育工学等の知見を教育にどのように当てはめるのかを考え,理論を基盤とし,実践し,学習者の学びを支援することや授業を改善することが目的となっています。

学びをデザインする視点では,学習目標,評価,学習方略を一体的に考えることが重要です。学習者の現状と学習目標の間に生じているギャップの大きさや,そのギャップを埋めるために適切な学習方略を吟味して,授業を設計する必要があります。

その中でも特に「学習目標」を明確にすることが非常に重要になり,学習者が学びの後に,何ができるようになっているのかを,外部から観察可能な「行動目標」として提示することが必要になります。例えば,「三角形の特徴について考える」といった目標は,曖昧ですが,「三角形の特徴を説明することができる」といった行動目標に変えることで,学習活動を明確にすることができ,学習者に学びの見通しや自己評価の視点を持たせることができます。

そして,「行動目標」として設定するためには,「書くことができる」や「説明することができる」のように,学習を「スキル」として捉えることが必要になります。スキルとしては,複雑な思考が中心となる「認知スキル」,身体の動作が中心となる「運動スキル」,認知スキルや運動スキルを使おうとする「態度スキル」のように大別することができます(ログシー 2021)。そして,このようにゴールとなるスキルを3つに分類すれば,その特定の心理学理論を背景とする教授法が効果的なものとして推奨できるようになり(向後 2012),学習方略を理論的に組み込むことができます。

授業を設計する際には,学習をスキルとして捉えた行動目標を設定し,それぞれのスキルの育成に向け,蓄積された知見から学習方略を定めることの重要さを知りました。今後の授業設計の視点として活用していきます。

【研究報告・相談から】

今後の研究についての計画を報告し,様々な視点からご指導をいただきました。今回は,目的が曖昧であり,言葉にずれが生じていることを痛感しました。

この春には,査読論文に挑戦し,自身の研究が学術の世界でどの立ち位置にあるのか,誰の幸せになるのかを常に考えると同時に,言葉の曖昧さ,文章と文章との繋がりについて向き合ってきたつもりです。私の弱点として,先行研究との兼ね合いと使用している言葉の曖昧さがあります。1年間を通して,弱点に向き合い,日々の研究活動を行っていきます。

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本日のゼミもありがとうございました。

(木野)

【参考文献】

鈴木克明(2005)e-Learning 実践のためのインストラクショナル・デザイン.日本教育工学会誌,29(3):197-205

ログシー(2021)【前編】「教える技術」で教え方のプロになる!https://onl.sc/MgFxUWQ(参照日 2023.04.26)

向後千春(2012)いちばんやさしい教える技術.永岡書店,東京