第6回院生ゼミ

2023.05.24 第6回院生ゼミ

本日は第6回院生ゼミが行われました。三井先生からは,昨日伺ったフリースクールのお話や「動機付け」に関するお話をいただき,ゼミ生は各自の研究の進捗を報告しました。

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【自己決定と動機付け】

三井先生から,自己決定理論による自己決定と動機付けに関するお話をいただきました。

自己決定理論とは,内発的動機づけの概念を発展させた理論であり(溝上 2018),自己決定性の概念を核として,さまざまな領域における動機づけを包括的にとらえる理論的枠組みを構築しています(岡田 2010)。この理論では,子供の学習における動機づけに着目しており,「非動機付け」,「外発的動機付け」,「内発的動機付け」の3つの動機付けを想定しています。

そして,「非動機付け段階→外発的動機付け段階→内発的動機付け段階」のように,一つの連続帯上にあると考えることができ(Ryan and Deci 2000),教員として子供達の動機付けの段階に応じた介入や支援をするのかが大事になります。例えば,内発的動機付け段階でないのに,子供達が内発的動機付けで学習を進めていると信じて学習を行った場合,子供達の自律性が引き出されず,高いパフォーマンスは期待できません。また,内発的動機付け段階の子供に対して,外発的動機付けを行った場合,内発的動機付けが失われていくといった(Deci 1971),アンダーマイニング効果も検討しなければなりません。そして,「自分にはできる」という自信を持てば,やる気が出るため,行動を起こし,少々のことでは諦めずに頑張ることができるといった自己効力感を意識することや(Bandura 1977),人が課題に払う努力は,課題を上手く達成できそうだという期待の程度と,課題自体に取り組む機会を価値づける程度によって決まる期待価値理論(Atkinson 1957)に基づいた授業設計や発問が教師には求められていると思います。

自己決定理論に基づき,子供のためにどのような介入や支援を行うのか,環境を構築するのかを今後考えていきたいと思います。

【研究の進捗・報告】

今回も前回に引き続き,ゼミ生が各自の研究の進捗を報告しました。進捗として,研究の背景にあたる先行研究を調べたり,研究全体の計画を立てたりしていました。研究の内容以外にもスライドの見やすさなど様々なご指導をいただき,研究が相手に伝わりやすいようにスライドを作成することも意識していきたいと思います。

ゼミ生各自が違ったテーマで研究を行っているため,それぞれが日常的に研究の進捗を報告し,お互いにコメントするといった協働的な学びも意識していきたいと思います。

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本日のゼミもありがとうございました。

次回も引き続きよろしくお願いいたします。

(木野)

【参考文献】

溝上慎一(2018)(用語集)内発的動機づけ・自己決定理論.http://smizok.net/education/subpages/aglo_00010(intrinsic-motivation&SDT).html(参照日 2023.05.24)

岡田涼(2010)自己決定理論における動機づけ概念間の関連性―メタ分析による相関係数の統合.パーソナリティ研究,:152–160

Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000) Self-Determination Theory and the facilitation of Intrinsic motivation,Social Development, and Well-Being.American Psychologist,55(1):68-78

Deci, E. L. (1971). Effects of externally mediated rewards on intrinsic motivation. Journal of Personality and Social Psychology, 18(1):105-115

Bandura(1977)Self-efficacy : Toward a unifying theory of behavior change. Psychological Review.84:191-215.

Atkinson (1957) Motivational determinants of risk-taking behavior. Psychological Review,64:359-372