第1回院生ゼミ記録

2023.4.12 第1回院生ゼミ記録

本日から週に一度の院生ゼミが始まりました。ご多用の中,三井先生からご指導をいただけることに感謝し,2年間精進して参ります。

本日は,学習観に関するお話をいただきました。

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本日は3つの学習観と求められる教師の在り方についてお話をいただきました。

ご指導いただいた3つの学習観は,「行動主義」「認知主義」「構成主義(特に社会的構成主義)」です。

「行動主義」とは,パブロフの条件反射説やソーンダイクの試行錯誤説,スキナーの自発的行動の条件付け理論などから影響を受け,行動心理学の考え方に基づいた学習観です。学習者の行動を即時的なフィードバックによって強化するという考え方や,学習者の認知過程を考慮しない点が特徴的です。

「認知主義」とは,情報処理過程を明らかにして学びのメカニズムを解明することを目的とし,認知心理学に基づいた学習観です。記憶や思考で取り扱われる知識の獲得と利用を科学的に解明することを通じて,児童生徒が日々の授業を通して学習する様々な行動を理解することができます(多鹿 1992)。情報処理過程を考慮し,ガニエの9教授事象に当てはめた学習支援設計を行うなど,認知心理学の知見を踏まえた授業設計や実践が学習者の学びの効果を高めるために重要だと感じました。

「構成主義」とは,相手(人やもの等)からの情報,記憶が知識となるためには,それらの素材を用いて,知識として構成していかなければならないといった学習観です(鈴木 2022)。故に,「構成主義」では,児童生徒が中心となることを重視しており,この点が教師主体で児童生徒の学習の効果を高める「行動主義」,「認知主義」とは異なります。

また,「構成主義」の中でも「社会的構成主義」があり,これは,社会的な関係性の中で相互作用を通じて知識を構成するといった学習観のことを指します。知識の構成は個々の学習者が行いますが,社会的相互作用を通じた協働的な学びが展開されるため,個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実に,密接に関連しています。

そして,社会的構成主義的な学習観において,知識は社会的相互作用によって構成されるため,環境を適切に捉え,支援をする必要があります。例えば,昨年度,静岡市のある小学校で授業参観をさせていただいた際に,教師は児童に対して「課題の近い人と協働するのもいいし,この人と学びたいって人と協働してもいいね。」という方略を与えることで,児童の協働の対象を調整させていました。社会的構成主義における教師の役割や支援方法はまだまだ多くあると考えられますが,先行研究や資料を学びながら,授業参観などを通じて教師の在り方を模索していきます。

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実践を科学,学習理論に当てはめ,これらを理解し,伝えていくことが必要だと学びました。自身の実践と理論の間にギャップが生じてしまうと,主体的な子供達の姿は遠ざかり,まとめや伝達を教師が行い,子供達は受動的に学ぶ姿になってしまいます。今後も学習理論を学び,教育実習における実践とつなげるといった,理論と実践の往還を図っていきます。

(木野)

【参考】

多鹿秀継(1992)認知心理学と教育課程.今栄国晴(編著)教育の情報化と認知科学ー教育の方法と技術の革新ー.福村出版,東京

鈴木宏昭(2022)私たちはどう学んでいるか 創発から見る認知の変化.筑摩書房,東京