第2回院生ゼミ

2023.04.19 第2回院生ゼミ

本日は,第2回院生ゼミが行われました。三井先生から,先週に引き続き,学習観に関するお話をいただきました。

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【学習観に基づく授業の省察】

本日は,認知主義的学習観と非認知主義的学習観について学びました。認知主義的学習観では「学びの質」が重視され,非認知主義的学習観では「量や結果」が重視されるという違いがあります。また,それぞれの学習観には構成する志向があり,授業を省察する際にはそれらの志向を考慮することが重要であるとご指導をいただきました。

昨年度常葉大学を卒業した学生は,学校現場で日々奮闘している様子や実践内容,悩み等を共有してくれます。ある卒業生は,算数科の「時刻と時間」に関する授業において,子供たちが学校に登校する時間から下校する時間までの時刻を表す時計を時系列順に並べる活動を行っていました。この授業は認知主義的学習観に基づいており,特に「意味理解志向」と「思考過程重視志向」に該当すると言えます。ただし,この授業には「時計で表現された時刻を読み解くこと」が前提として必要であるため,この前提を理解するための非認知主義的学習観に基づく授業が必要であると考えられます。

子供たちの能力に応じて,自分自身の授業を省察し,知識や技能の獲得が不完全な場合は,非認知主義的学習観の中でも「練習志向」に重きを置いたフラッシュ型教材を活用した授業を実践する必要があります。そのため,授業を設計する際には,「今回は〇〇志向を重視しよう」という視点を活用し,今回の授業で活用した学習観から,次の時間や次の単元では別の志向を重視するように調整していくことが大切です。

学習観には,認知主義的学習観や非認知主義的学習観という分類がありますが,これらには優劣はありません。したがって,子どもの状況や活動内容に応じて,適切な学習観を適用することが重要です。たとえば,外国語学習では,認知主義的学習観に基づく方略志向の実践だけでなく,学習量志向の実践も必要とされる場合があります(赤松 2022)。このように,授業実践や設計において学習観を考慮し,そこから振り返って調整を行うことを意識していきます。

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先週,本日いただいたご指導をもとに,学習観を一つの実践に関する省察の視点,授業設計の視点としていきたいと思います。

本日のゼミもありがとうございました。

(木野)

【参考文献】

赤松大輔(2022)学習観に関する研究の概観と展望―「教科固有の見方・考え方」と「教科を超えた資質・能力」の育成に向けて―.教育心理学研究,70(4):419-438