第10回院生ゼミ

2023.07.12 第10回院生ゼミ

本日は第10回の院生ゼミが行われました。久しぶりの院生ゼミということもあり,新たな研究や以前の研究の進捗,再来週に行われる情報モラル講座の設計・運営に関して報告を行いました。

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【学校の情報技術モデルに関して】

本日は,Branson(1990)が提唱した学校の情報技術モデルを基にご指導をいただきました。Branson(1990)では,変化するテクノロジーを取り入れた学校教育の体系的な設計の中心となる基本的な問題を扱い,学習者と教師の情報の共有,伝達をモデルにし,提唱しています。

提唱されたモデルは3つあります。1つ目は,「口頭継承モデル」です。口頭継承モデルでは,口頭による教師の経験や知識の伝達が行われ,学習者の情報源は教師のみであるといった一斉指導のようなモデルになっています。2つ目は「現在のモデル」です。現在のモデルでは,教師は情報の伝達者及びゲートキーパーとして位置づけられ,教師と生徒の間には相互作用があり,生徒間の相互作用は二次的なものであるといったモデルになっています。口頭継承モデルと比較すると,教師が情報を一方的に伝えるという役割から,教師の持っている情報と学習者を繋ぐといった双方向性のある役割へと変化していることがわかります。3つ目は,「情報技術モデル」です。情報技術モデルでは,情報データベースに対して,学習者も教師も等しくアクセスできるようになっていることに加え,教師が情報をコントロールするのではなく,学習者も教師も情報データベースを囲んでいるのが特徴です。

以上の3つのモデルの中でも「情報技術モデル」に関して,Branson(1990)では未来の姿として示されていました。しかし,GIGAスクール構想により1人1台の情報端末やネットワーク通信が整備されたことにより,実現が可能になりました。そのため,教師は新たな指導を行う必要があります。例えば,今までは教師が用意した情報のみを授業で学習者は得ていましたが,今後は学習者が多くの情報にアクセスすることが可能になったため,メディア・リテラシーを育成する必要が生まれました。

情報技術モデルの実現が可能になりましたが,私たち院生は実際に情報技術を活用した学習者中心の教育を参観したことが少ないです。三井ほか(2021)では,情報技術を活用した学習者中心の教育において必要と考えられる授業観の具体を抽出しています。まず,私たちはこのような知見から教師の役割や授業のあり方を考えていく必要があると思います。進展し続けるテクノロジーと教育を結びつけ,学習者にとって最適となる教育や育成すべき能力を今後も考えていきたいと思います。

【研究の進捗報告・相談】

今回も各自の研究の報告を行いました。三井先生からいただいたご指導としては3つあります。1つ目としては,先行研究の引用に関してです。先行研究では何を伝えているのか,自身の研究で伝えたいことと繋がりがあるのか等を考える必要があります。2つ目は授業設計の視点として子供の多様性を考慮することです。院生の中には実践研究を行う方がいます。そのため,授業設計の視点から全体ではなく,子供一人一人の多様性を考慮し,授業の設計を行うことが重要だと学びました。3つ目として,定義に関してです。具体的に定まっていない定義に関しては,研究の内容を的確に伝えるために定義を定める必要があります。定義を定めるためには,多くの論文を読み,知識を獲得する必要があります。そのため,今後も論文や書籍から学んでいきたいと思います。

それぞれが違った研究を行っており,新たな視点や知識が獲得できます。今後も学び合っていきたいと思います。

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山梨県は,37℃の気温を記録し,全国最高気温を更新しました。24時間いつでも勉強ができる院生室にはエアコンが完備されています。恵まれた環境に身を置けていることに感謝し,日々精進してまいります。

本日もありがとうございました。

(木野)

【参考文献】

Branson, R.K. (1990)Issues in the Design of Schooling: Changing the Paradigm. Educational Technology, 30(4): 7-10

三井 一希,戸田 真志,松葉 龍一,鈴木 克明(2021)1人1台端末を活用した授業において学習者中心の教育を志向する教師の授業観の特徴分析.教育システム情報学会第46回全国大会,55-56